序章(プロローグ)
ジオリブ研究所所長、ジオ・アクティビストの巽です。
今日から、シリーズ「美食地質学」を始めることにします。このシリーズは、日本の食文化と変動帯日本列島との密接な関係を紐解いてゆくものです。和食という文化が、日本列島のダイナミックな変動があったからこそ育まれたことを知っていただければと思います。
私たちが暮らしている日本列島は、地球の表面を覆う十数枚のプレートのうち4つが鬩ぎ合い、世界中で最も地震と火山が密集する「変動帯」と呼ばれる地帯です。
「天災は忘れた頃にやってくる」というフレーズはご存知でしょう。随筆家であると同時に超一流の地球科学者でもあった寺田寅彦が発した言葉です。寺田に言わせると、日本列島は「厳父」と「慈母」の2つの顔を持つそうです。日本列島は何度も大震災や火山災害を引き起こして人々に試練を与えてきたのですが、同時に、豊かな風土や恵みをもたらしていることを表したのでしょう。私も地球科学、特に地球や日本列島の営みを調べています。また食べることや呑むことが大好きです。そんな私は、変動帯日本列島の慈母の顔、すなわち恩恵の1つが多様な食材であると確信しています。そして変動帯であるからこそ、食材やそれを育む自然に感謝すると共に畏敬の念を抱きながら美味しく頂く食文化、「和食」が成立したと考えています。
和食は、日本人の伝統的な食文化として、2013年にユネスコの「無形文化遺産」に登録されました。フレンチの神様とも称されたジョエル・ロブション氏も、和食そして日本を愛した人でした。また近ごろでは、海外でもこぞって和のテイストを取り入れるシェフが増えているそうです。このように和食の素晴らしさが世界に認められて広がることは大変喜ばしいことです。ただ忘れてはならないことは、、私たち日本人はこの食文化を、厳父の如き日本列島から与えられてきた数々の試練を受けながら育んできたのだということだと思います。
さあ、日本列島の変動と食の密接な関係、ジオリブしましょ!
巽好幸の新刊『「美食地質学」入門』の本文より、「豆腐が日本で独自の進化を遂げたワケ」が、光文社新書の公式noteで紹介されています。こちらより、ご覧ください。
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